「権力の館」にて東京・平河町の砂防会館――と聞いて、ピンと来た人はかなりの政治通と言っていい。昭和10(1935)年に設立された任意団体、全国治水砂防協会が建設し、管理・運営する。設立当初の赤坂溜池から平河町に新築・移転したのは1957年8月。そして築後約60年で老朽化と耐震性の問題から全面建て替えとなり、現在の砂防会館(本館。地下1階、地上7階)が完成したのが平成30(2018)年4月である(現在は一般社団法人)。 55年体制発足以降の自民党史に言及した故・伊藤昌哉の『権力の研究―実録自民党戦国史』(1982年、朝日ソノラマ刊)を繰るまでもなく、頻繁に登場する「権力の館」とは旧砂防会館を指す。 有名な話はこうだ。そもそも自民党本部は66年に永田町に自由民主会館が完成するまで砂防会館にあった。そして空いた同館2階と3階の店子として絶頂期の田中角栄元首相の「木曜クラブ」(田中派)と中曽根康弘

