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元祖スマートウォッチ「Pebble」が復活するも開発コミュニティと生みの親が対立


クラウドファンディングサイトのKickstarterから始まった、Apple Watchよりも先に登場したスマートウォッチ「Pebble」は、一度は失敗して事業売却する事態に陥ったのですが、創業者であるエリック・ミギコフスキー氏の手で復活しています。しかし、復活を果たしたはずのPebbleが再び危機に陥っていると、Pebbleを長らく支えてきた非公式プロジェクトのRebbleが指摘しました。

Rebble · Core Devices Keeps Stealing Our Work
https://rebble.io/2025/11/17/core-devices-keeps-stealing-our-work.html


ミギコフスキー氏がPebbleを立ち上げたのは2008年のこと。2012年にKickstarterで出資を募集したところ世界中の6万8000人以上から1000万ドル(約15億5000万円)以上を調達することに成功。しかし、Pebbleは事業の一部を2016年末にFitbitに売却し、サービスを終了しました。Pebbleの創業者であるミギコフスキー氏は、なぜPebbleが失敗に終わったのかを語っており、その内容は以下の記事にまとめてあります。

Apple Watchよりも先に登場したスマートウォッチ「Pebble」はなぜ失敗したのかを創業者が語る - GIGAZINE


サービスが終了して一部機能が使えなくなったPebbleを引き続き使えるようにするために生まれたのが非公式プロジェクト「Rebble」で、Pebbleがミギコフスキー氏の手で復活するまで、RebbleがPebbleコミュニティを支えてきました。

Pebbleが復活を遂げたあとの2025年10月、Rebbleはミギコフスキー氏が新しく立ち上げたCore Devices、つまりは復活したPebble公式との提携を発表しました。Core DevicesがRebbleと提携した大きな理由は、Rebbleが運営するPebble向けの開発者コミュニティやアプリストアが大規模なためです。この契約により、Core DevicesはRebbleサービスの利用料としてユーザー1人あたり月額0.20ドル(約31円)を支払うこととなっていました。

しかし、2025年11月になってRebbleは「Core DevicesはRebbleの仕事を盗み続けている」というブログを公開し、ミギコフスキー氏とCore Devicesを批判しています。


Rebbleは「Rebbleは設立当初から、Pebbleエクスペリエンスを存続させるために取り組んできました。アプリストアの維持、Bobbyのような新サービスの構築、そしてPebble使い続けている人々への最前線のサポートの実施などです。しかし、エリックとCore DevicesはRebbleと協力するのではなく、過去10年間の成果をすべて彼らに渡し、彼らの好きなように扱えるようにしろと要求してきました。また、エリックの最新のニュースレターでは、彼のビジネスを動かす成果がどこから来ているのか、真実を語っていません。 私たちもできれば彼らと協力して素晴らしいものを一緒に作りたかったのですが、行き詰まりました。そこで今、私たちはコミュニティの皆さんに、Core Devicesをどうすべきかお尋ねしています」と記し、ミギコフスキー氏とCore DevicesがRebbleのこれまでのPebbleコミュニティへの貢献をすべて盗もうとしていると述べました。

特に、現在Core Devicesが提供しているPebbleのアプリストアは、RebbleがPebbleのサービス終了以降約10年にわたって支えてきたものであると指摘。実際、アプリストアを支えるデータは100%、Rebbleが提供するものだそうです。そして、PebbleのアプリストアはRebbleがサポートしてきた約10年間でサービス終了時よりもはるかに充実したものに進化したと指摘。タイムラインや天気予報エンドポイントのアップデートなど、数百ものアプリにパッチを当ており、アプリの公開停止を希望する開発者からの削除リクエストにもすべてRebbleが対応してきたことを強調しています。

また、Core Devicesは新しいPebbleのユーザーに、Rebbleが提供するアプリストアへのアクセスを提供したいと考えており、これにCore Devicesおよびミギコフスキー氏は同意したはずであると指摘。アプリストアをRebbleが提供したいと訴える理由について、Rebbleは「Core DevicesがこれまでのRebbleの成果を囲い込み、クローズドなアプリストアを構築しないように、確実な保証が欲しいため」と説明しています。

しかし、Core Devicesがこれに同意してくれていないとRebbleは言及しました。「Core DevicesはこれまでRebbleがアーカイブ、キュレーション、サーバー管理、関連性の維持に多大な努力をかけてきたデータを無制限に自由に利用したいと主張してきました。もしもCore Devicesにアプリストアのデータを自由に利用する権利を与えれば、Core Devicesは独自のアプリストアを構築し、Rebbleに取って代わるだけです。もしそうなれば、コミュニティには何も残りません」とRebbleは主張しています。

また、ミギコフスキー氏は口頭では独自のアプリストアを構築する件について、「そのような計画はない」と言い続けたそうですが、いざ書面で確認すると「独自アプリストアを構築しない」ことの保証を拒否したそうです。そして、契約が宙ぶらりんの状態でRebbleのアプリストアをスクレイピングし、契約違反を犯したとRebbleは主張しています。


Rebbleの目標は「PebbleをCore Devicesではなくコミュニティ主導とすること」であると主張。そうすることで、前回のように公式に問題が発生しても、Pebbleを存続させることが容易になるためです。

ただし、Rebbleは「Rebbleはあくまでもコミュニティの皆さんのものであると考えています」として、選択肢はコミュニティが決めるべきとしました。残された選択肢は「Core Devicesから積極的にRebbleの成果を守り、今後もコミュニティの存続に向けて努力を続ける」と「Core Devicesの好きなようにさせる」の2択です。

Rebbleは「もしエリックとCore Devicesが私たちを追い出すのではなく、協力すると法的に約束してくれるのなら、私たちはそれを受け入れたいと思っています」と述べ、Core Devicesとミギコフスキー氏がRebbleに譲歩してくれることを期待しました。

これに対して、ミギコフスキー氏は自身のブログで「Rebbleは誤った非難でコミュニティを誤解させている」として、Rebbleのブログはコミュニティに誤解を与えるものであると主張しています。

Pebble, Rebble, and a Path Forward
https://ericmigi.com/blog/pebble-rebble-and-a-path-forward


ミギコフスキー氏は「Rebbleはアプリストアのデータを100%所有していると主張していますが、実際は2012年から2016年までの間に個々の開発者が開発し、Pebbleのアプリストアにアップロードした1万3000点のアプリに関するデータを囲い込もうとしています」と述べ、アプリストアのデータすべてがRebbleにより作成されたものではないと指摘。また、Rebbleの保有するデータもPebbleのアプリストアのデータをスクレイピングしたものであると指摘しています。

さらに、「私はPebbleのエコシステムをオープンソースとして保つために尽力しています。Pebbleのアプリストアのコンテンツは自由に利用できるべきであり、特定の組織によって管理されるべきではないと考えています」と主張しました。

なお、Rebbleとミギコフスキー氏およびCore Devicesとの対立について、ソーシャル掲示板サイトのHacker Newsでは以下のようなコメントがありました。

Pebbleのアプリストアフロントエンドの主要開発者であり、データベースのメンテナンスを担当し、セキュリティ・インフラストラクチャー・プライバシー、さらにPebbleのエコシステムに関わるさまざまな業務を統括してきたという人物は「Pebbleを100%フリーのオープンソースソフトウェアではなく、一般公開されているエコシステムとして開発することは、現時点では愚かな行為です。エリックがどんな形であれそうするなら愚かな行為であり、Rebbleがどんな形であれそうするのであればそれも愚かな行為です。エリックや他の誰かがアプリストアのデータを欲しがるなら、すべてわたして幸運を祈ってあげましょう。一方、コミュニティはこれまでやってきたことを続ける必要があります。つまり、コミュニティの全面的な承認とサポートを得て、完全にオープンソースでコミュニティファーストのソリューションに取り組む必要があります。プロプライエタリなソリューションは常に行き止まりなので、それらと戦ったり考えたりすることにエネルギーを無駄にしないでください。パブリックリポジトリへのプッシュを続けましょう」とコメント

別のユーザーは「Core DevicesとRebbleに何が起ころうとも、個人的には選択肢と所有権が欲しいだけです。Core DevicesがFOSSソースから独自のファームウェアをコンパイルしてロードすることを難しくせず、FOSS SDKやCLIツールを使ってBluetooth/Wi-Fi/LoRaなどを介して新しいハードウェアとインターフェースできる近道を用意する限り、私は顧客として、どんな問題も気にしないでしょう。より多くのハッキングの可能性と選択肢の追求こそが、私が最初のKickstarterでPebbleを支援した理由であり、現在の市場で日常的に着用できるデバイスに完全な自由と選択肢が欠けていることが、私が過去5年以上にわたってアナログ時計だけを使用している理由です」とコメントしています。

他にも、「出現するかどうかわからない独自のファーストパーティーソリューションよりも、オープンソースの代替ソリューションをユーザーが実行したいと思うようにすることに重点を置くのが最善です」といったコメントも寄せられていました。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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