VTuber企業グループの誕生日グッズの告知と発売のタイミングについて

にじさんじの誕生日グッズが誕生日の少し前から告知されてるのは以前にPANORAでVTuberの誕生日の連載(毎週その間に誕生日を迎えたVTuberの出来事を紹介する記事とか書いてた)をしてた頃から気になっていたのだけど、そう言えばホロライブはだいたい誕生日の3Dライブで初披露するな、自分の応援してるななしいんくはだいたいカウントダウン配信で紹介するな、とみんなけっこう違うことに気が付いて面白いなと昨日調べててツイートしてたが、これちゃんとまとめておいた方がいいかもなとさらに小一時間調べてまとめてみて、ちゃんと説明するならこれブログかなと思ったけど、よく整理したら案外シンプルそうなのに気づいてツイートしたが、事例の紹介含めるとやっぱりブログのボリュームかなと改めて書いてみる。


ちなみにVTuberの誕生日グッズだが、VTuberにとってグッズやボイスの販売は大事で、上場企業2社はそれぞれ年間400億円くらい売り上げてるがその半分くらいはどっちもグッズ等の売上。VTuberで特にグッズが売れるタイミングとしてはやはりお祝い事が多く、誕生日(と周年)は各VTuberに紐づくグッズが非常によく売れる時期である。近年の大手は会社企画グッズの開発でこの割合を減らすことに取り組んでるので割合としては年々減っているものの、歴史的にかなり比重の大きいものである。まだここまででない中堅グループにとってはなおさら重要と言えるだろう。

カバー社IR 2026年3月期 第1四半期決算説明資料 27pより引用

にも関わらず、企業グループ各社の誕生日グッズについて調べると、やり方がだいぶ違い、時系列的に変化している点や、あるいはかなり初期に固まっている例もあって、いろいろ面白かった。


現在の主要な事務所の方式を整理するとだいたいこんな感じ。

以下はだいたいその具体例や歴史的な推移なんかを挙げているだけ、という感じです。

主なパターンと代表例

記念配信中に発表・発売(ホロライブ方式)

イメージとしてわかりやすくよく見るのはホロライブのように、誕生日当日の記念配信中に誕生日グッズを発表・ほぼ同時(配信直後のケースもある)に発売開始、というパターン。ホロライブでは数量限定で直筆入りアイテムが含まれたセットが先着販売されることも多く、戦争になりやすい。

【 #姫森ルーナ生誕LIVE2025 】Luna RebirthDay !! 💗 BIRTHDAY 3D LIVE【ホロライブ】 よりスクショ

ボイスについてはホロライブは2019年3月のさくらみこから誕生日ボイスの展開を始めており、この頃から配信中発表・発売のタイミングが定着している。

2019年中には夏色まつりのボイスセットに直筆入りのポストカードをつける特典が試みられ、夜空メルではアクスタ・アクキーの特典も登場。2020年のロボ子さんあたりからはグッズがほぼ必ず付くようになっており、例外的だが常闇トワのようにグッズが主体でボイスがセット特典になるケースも出ている。タレントによって若干の運用は変わるが、ホロライブはボイスありきの誕生日グッズ文化がある。


現在同様に誕生日当日の記念配信内で発表の方式を取ってる代表例にはぶいすぽっ!がある。

【 #小雀とと生誕祭 】生まれた!!!【 ぶいすぽ / 小雀とと 】 よりスクショ

ちなみにぶいすぽっ!は直筆入りポストカードを数量限定で販売する伝統がある。これは2020年頃にぶいすぽっ!が誕生日グッズの展開を始めた最初期が同様の直筆入りポストカードだったため。

ネオポルテも同様の発表方式。内容は直筆サイン入りポストカードを含むセットと誕生日ボイス(グッズと別)があり、数量限定はないがホロライブに近い。

いつもありがとう!お誕生日の日は主役になれるらしい #幽乃うつろお誕生日2025 【ネオポルテ】 よりスクショ

なお直近の水無瀬については前日からのカウントダウン配信時に発表、当日18時に発売、という若干異なる方式を取っていた。


ちなみに現在は同じBrave GroupであるPallete Projectはバーチャルアイドルであることもあり、2021年から誕生日3Dライブを配信して誕生日グッズを発表・発売する形式が早くから定着していた。

【無料3DLIVE】鬼多見アユムBirthday Live【パレプロ / Palette Project】#鬼多見アユム生誕祭2025 よりスクショ



こうした誕生日ボイス等の展開は、イベント合わせなどを除くと実はRe:AcTが2018年とかなり初期から始めている。なお当初の発売タイミングは日付変更時である。

Re:AcTは時期によってやり方はいろいろ変わっているが、現在は上記らのホロライブに近い方式。かつては少なかった3Dになっているタレントも最近は多く、3Dの記念配信での発表が増えている。

【#丸餅つきみ生誕祭2025】今夜は3Dでパーリナイ🥂✨【丸餅つきみ/Re:AcT】 よりスクショ


同様の例にソニーのVEEもある。なお直近の秋雪こはくはカウントダウン配信中に発表・0時発売で、後述のななしいんく方式に近く混在するパターンでもあるかもしれない。

【#雛星あいる3D生誕祭2025】誕生日についに3Dお披露目!?圧倒的お祝いデーなのだ!【雛星あいる/VEE】 よりスクショ



カウントダウン配信中に発表・日付変更時に発売(ななしいんく方式)

もう一つよく見かけるのが、知名度ではホロライブらに劣るかもしれないが筆者はよく見ていて馴染んでいるななしいんくのやり方で、販売開始が日付変更時に固定され、カウントダウン配信中に発表・内容紹介をするという形式(日付変更前にグッズの説明を先にするタレントもいる)。夜の記念配信は3Dライブや凸待ちなど、別途の企画を行うことが多い。

【お誕生日カウントダウン🍰 】3年目にして、とうとう重大な告知が…!?一緒にお祝いして~💙【 蛇宵ティア / ななしいんく 】 よりスクショ


ななしいんくの前身となる有閑喫茶あにまーれ・ハニーストラップらの774inc.はもとはグループでの展開が中心で、個人の誕生日グッズは2019年のソロイベント合わせから。

イベントと結びつかない誕生日グッズは2020年6月の島村シャルロットが最初となるが、このときは記念配信で発表・発売するホロライブ方式を取っている。一方で2020年9月の風見くくではカウントダウン配信で発表・発売を行っており、この時点で双方が混在。この体制は2022年頃まで続いており、当時のグループで言うとあにまーれ・シュガーリリックのメンバーはカウントダウン配信時、ハニーストラップ・ブイアパは記念配信時に発表する傾向があった。2023年の統合以降は現在の方式に統一されている印象がある。

【誕生祭】【3D配信】島村シャルロット誕生祭!!!【島村シャルロット / ハニスト】 よりスクショ
【#くくの日】誕生日カウントダウン、くくの日を迎えます。【風見くく / あにまーれ】 よりスクショ


ちなみにななしいんくの誕生日グッズ等は伝統的にボイスはつかない(まれに特典につけているタレントもいる)。フルセットでは直筆入りのアイテムを特典としているケースが多い。


カウントダウン配信自体はホロライブ等でも行われることが多く、注目を集めやすい企画でもあることから、ななしいんくに限らずこの方式を取る事務所も多い。

たとえば最近勢いのあるすぺしゃりても同様の方式。内容についてはボイスあり、直筆入りアイテムのセットありとホロライブやネオポルテと近く、新興ゆえに先行例を研究した結果という印象。

【 誕生日カウントダウン 】告知あり♡はじめての誕生日を一緒に迎えたいっ!!【 あいうらら / すぺしゃりて 】 よりスクショ


同じく勢いのある事務所のVariumも同様の方式を取っていることが多い。ただし直近では当日夜の記念配信に合わせて発表しているため、試行している状況かもしれない(逆にカウントダウン配信が無かったため、そちらの事情かも)。こちらもボイスあり、直筆入りアイテムのセットあり。ちなみにVariumの運営企業はななしいんくと親会社が一緒だったりもする。

¦誕生日カウントダウン¦ありメンに選んでもらった誕プレ紹介企画🎁【飴望にぃな/ Varium】 よりスクショ


新興グループではFIRST STAGE PRODUCTIONもこの方式。ボイス・直筆セットも同様。単品でランダムチェキ風カード(ランダムで直筆サイン入り)がある点はやや特殊か。

【誕生日カウントダウン】はじめての誕生日、君と一緒に迎えたいな♡【緋ノ宮ヒマリ/そらびん/#新人VTuber】 よりスクショ


このように例が多いあたり、この方式はファンが集中しやすいカウントダウン配信を盛り上げて購買につなげる流れとして合理的でもあり、新興グループが採用しやすいやり方なのかもしれない。
また単純に、誕生日当日に売っている時間が長い(24時間)というのもメリットかもしれない。配信に立ち会えないが、誕生日グッズは誕生日中に買いたい、というニーズはあると思われる。

その他:配信外で発表、定時に発売

基本的には上記2方式が多いが、有名なグループでこれ以外のやり方を取っているところが複数あるため個別に紹介する。形としてはそれぞれ違うが、共通する特徴として下記の点がある。

  • 配信外で公式から発表される。
  • 発売タイミングも配信外で、定時に発売される。


代表的なものが冒頭でも挙げたにじさんじ。だいたい1週間ほど前に発表、誕生日当日の18時に発売される。直近のラトナ・プティのように販売開始のタイミングに当日の記念配信を取るタレントもいるが、ゴールデンタイムを離れてる関係で配信外の発売となる場合が多い。

【 #ぷて誕生日 】7歳を迎えました!祝って!!!!【ラトナ・プティ/にじさんじ】 よりスクショ

にじさんじは毎月ボイスを出す試みなどを初期からやっていた関係で、誕生月に誕生日関連のボイスを出すライバーは早くからあった。誕生日ボイスを出すのでは2019年6月の郡道美玲が早く、9月の雪城眞尋以降は同じタイミングでグッズを発売する例が出てきている。

決定的な例が2020年5月の童田明治で、この回の複製サイン・メッセージ入りアクリルパネル付きのグッズ&ボイスセットが現在の方式につながっている。これ以降は、グッズの種類・販売タイミング・販売サービス(Boothから自社ストア)などは変わっているものの、大きくやり方は変わっていない。

NIJISANJI ENについても2022年から同様のグッズ展開がスタートしている。こちらは昼12時発売。

グッズの内容も統一で、現在はタペストリー・アクリルパネル・缶バッジ・複製サインやメッセージの手紙やチェキ風カードなどのセット、ボイス&壁紙、と決まっている。ホロライブ方式やななしいんく方式に慣れているリスナーではいろいろ違和感があるが、にじさんじのリスナーでは「そういうもの」なのかもしれない。
ちなみに誕生日ボイスを出さない例自体はあり、その場合グッズだけが出る。



これらは販売サービスの事情などかと思っていたが、かなり初期から固定化しているあたり、やり方を揃えてコストを下げる取り組みなのだろう。


アップランド(どっとライブ・ぶいぱい)も現在は、誕生日記念グッズについては数日前に販売決定を告知ポストし、当日の12時に発売する運用をしている。カウントダウンや記念配信でも紹介するが、発表・発売のタイミングではないのはにじさんじと同様。このやり方自体は2025年の花京院ちえりからスタートしており、比較的最近の変化。

【 誕生日カウントダウン 】お誕生日の瞬間を一緒に迎えたいのだ🐶【遠吠きゃん】#遠吠きゃん誕生日2025 よりスクショ。なお「販売開始」とあるがたぶんカウントダウン配信時は未発売。

どっとライブはイベントなどがある電脳少女シロらを覗くと2020年から誕生日ボイスの販売を開始。当時から配信とは関係ないタイミングで発表・発売する形式ではあった。2021年からは独自のコンテンツとしてVRボイスを展開している。


あおぎり高校の誕生日記念グッズは当日の販売開始と同時に発表ポストするが、昼12時発売のため配信とはあまり重ならない。当日の記念配信などで後から紹介することが多い。

【誕生日】今年は まったり 君たちと おしゃべりして ケーキたべるよ🎂✨️【我部りえる/あおぎり高校】 よりスクショ

過去にはホロライブ方式で配信で発表後に販売していた時期もある。現在の方式は販売サイトがviviON Blueになった関係もあるかもしれない。

【全身3D】●っ●●イライラ棒~見えないものを見ようとして~【#大代生誕2023】 よりスクショ



その他の事例

継続的に行われている例ではないが、遡って調べていて面白かったものなど。
ちなみに最初期のVTuberの誕生日グッズはだいたいイベント合わせが多く、電脳少女シロちゃんの最初の誕生日グッズはコラボカフェのグッズ付きセットだったりする。

先述のように早い時期から誕生日ボイスを出していたRe:AcTはかなり試行錯誤が見られ、特殊な例が多い。
たとえば2019年には同じ誕生月のタレントの誕生日グッズをまとめて販売開始している。似たような例はネオポルテの初期にもあった。

同じく2019年の例では、誕生日の1ヶ月前に受注して誕生日当日に届くように発送するという誕生日グッズも出している。これはこれでファンには嬉しい形式かもしれない。

Brave Group系列のRIOT MUSICは誕生日がイベントになってしまうケースが多く事例が少ないが、YouTubeでの3Dライブ配信をしているケースもライブイベントのように誕生日グッズを事前販売していることがある。


また著名なグループでは他にKAMITSUBAKI STUDIOがあるが、看板タレントの花譜がもともと誕生日を公開していないなどの関係で、誕生日グッズの展開はこれまで行っていない。
後輩タレントでは誕生日がある例もあるため、今後はあるかもしれない。

まとめ

以上のように、一見同じような毎日見かけるVTuberの誕生日グッズも、大手同士でまるでやり方が違い、複数のパターンが存在することが分かる。
明確なスタンダードが無かった2018-2020年頃に複数の方式が試みられ、ホロライブ方式が人気もありデファクトスタンダード的に浸透していく一方、早い段階で独自の方式に固定したにじさんじがあり、またななしいんくの方式がゆるやかに新興グループに浸透している現状も見える。販売ストアなどの事情か、そうしたスタンダードを離れた展開をしてる中堅事務所も少なくない。直近でもそれぞれ変化は見られ、来年はまた変わっているかもしれない。またキリがないので今回チェックしていないが、より小規模なグループや、海外事務所の例なども含めれば新しい文化があるかもしれない。

ホロライブと同様にグループ全体で3Dライブ配信等に強みのある場合、ホロライブ方式は相性が良く、分かりやすい強みがある。似た感覚で購買を促せるかもしれない。一方で、当日の記念配信でそうした強いコンテンツを出せない場合、誕生日というボーナスタイムの購買機会を減らす欠点もある。
その点でななしいんく方式は、カウントダウン配信という定番コンテンツ、配信中の宣伝ができる、誕生日の24時間まるまる販売できることなどの強みがあり、まだ3Dライブ配信等をできないグループには相性が良い点が多い。日付変更時から買えるというのもわかりやすい。

新興グループでも、3D生誕ライブ配信を用意してるケースやカウントダウン配信ができないケースではホロライブ方式、それ以外ではカウントダウン配信で発表のななしいんく方式と使い分けている動きも見える。このあたりは各グループの戦略と言えるだろう。

一方で経営視点では、グッズ販売に関するコストを減らすことが有益であり、長い目で見ればタレントの支援にもつながるのかもしれない。
そうした意味ではグッズのレパートリーの固定化を含めたにじさんじのやり方も有益かもしれない。たとえばななしいんくは、誕生日でなく周年グッズの方ではグッズのレパートリーを固定化している(発表・発売は誕生日グッズと同じ日付変更時)。



誕生日グッズ一つにも、さまざまな各事務所の思惑が見えるところで、いろいろ面白かった。