現地記者の視点を信じて報じる
テクノロジー担当のデスクを務めるキャサリン・クリール氏の朝は早い。時差に応じて世界中の記者から集まってくる記事をチェックし、オンラインで対話しながら、その日の記事のラインアップを決めていく。毎週水曜日には、定例企画記事「Tech Asia」で半導体サプライチェーンや電気自動車などの技術トレンドを取り上げ、特集記事を出す。
マーケット担当記者の南雲ジェーダ氏は、日本と世界の金融市場をカバーしている。朝起きてすぐ、昨夜の米国市場をチェック。順番にオープンする日本や香港、中国、東南アジアなどの金融市場をにらみながら、国際的な市場動向をリポートする。日本銀行をはじめ、世界の中央銀行や財務当局の言動をチェックし、次の動きに備える。
Nikkei Asia
テクノロジー担当デスク
キャサリン・クリール氏
「一番大切にしているのは、記者を信じることです」と話すクリール氏。その背景には、同紙が対象としている「アジア」という巨大な地域特有の難しさがある。アジアの国々は、歴史や文化が異なり、国ごとの規制や政治的な対立も少なくない。まずは、正確な情報を入手することを心掛けること。そして、センシティブな話題を取り扱う場合は、必ず社会的意義を考える。読者にとって重要だと判断すれば、十分な取材をした上で編集チームで議論を重ね、リスクを取ってでも記事を掲載している。
Nikkei Asia
テクノロジー担当デスク
キャサリン・クリール氏
「地域の人々の感情や実態を最もよく知るのは、現地にいる記者たちです。何度も確認しながら、最後は記者を信じて記事を出します」(クリール氏)
同氏は米国出身で英語が母国語だが、台湾やインドネシアなどで話されている英語のニュアンスは異なる場合がある。同じ表現でも、読者が受ける印象や影響が国ごとに異なる場合もある。現地の記者と議論し、どのように記事を表現するか注意深く判断している。
「なぜそのニュースを取り上げるのか。私たちの意図がしっかりと伝わるように心掛けています」(クリール氏)。難しい仕事だが、やりがいも大きいと語る。
「独自の視点」と「スピード」で
アジア経済の鼓動を伝える
編集長の田中暁人氏は、「世界の動きをアジアの視点で届けています」と話す。日本経済新聞社グループには「Better insights for a better world」というパーパスがある。加えて、Nikkei Asiaのアイデンティティは「The voice of the Asian century(アジアの世紀の声)」だ。「日本経済新聞は世の中をより良くするために、優れたインサイトを届けます。それを、アジアの視点で伝えるのが、私たちの使命です」と田中氏は述べた。
■Nikkei Asiaのトップページ。成長著しいアジアの経済圏の実像をアジアに多くの拠点を置く日経ならではの視点で発信する英語媒体。WEBとアプリ(iOS・Android対応)で利用できる
Nikkei Asia
編集部
南雲 ジェーダ氏
「スピードも、重要な価値の1つです」と南雲氏はいう。金融市場は生き物だ。一瞬で流れが変わり、経済に大きな影響を与える。特に東京市場は、アジア経済への影響が大きい。動向をいち早く伝えることが期待されている。
Nikkei Asia
編集部
南雲 ジェーダ氏
「自分の書いた記事が読者の反響を得たり、取材先や投資家に『役立った』と言われたりするのがうれしいです」(南雲氏)。日々の取材で、良い独自ニュースに出会えた瞬間にも喜びを感じるという。
「米国政府がNikkei Asiaの記事を引用してリポートを出すなど、私たちのスクープ記事の影響で株価が動くことも増えてきました」(クリール氏)。Nikkei Asiaの影響力が、年々高まっているのを感じる。
実際、国際的なプレゼンスは目に見えて高まりつつある。2025年6月、Nikkei Asiaは香港を拠点とするアジア出版者協会(SOPA)から2025年度最優秀賞を受賞した。グローバル枠では2023年、2024年に続き、3年連続の受賞となった。
■アジア出版者協会(SOPA)のグローバル枠の最優秀賞を3年連続で受賞。写真は2025年6月の香港での授賞式
編集チームのダイバーシティが強み
国や地域に偏らないことが魅力
「最大の強みは、記者や編集者のダイバーシティです」(田中氏)。多様な国籍やバックグラウンドを持つ記者や編集者がいるからこそ、Nikkei Asiaは多様な読者に受け入れられている。「1つの小さな記事の中でも、多様性を意識しています」と話す南雲氏は、男性が多い金融市場でも、女性の専門家によく意見を聞くようにしているという。Nikkei Asiaの読者には女性も多く、内容が偏らないようにするためだ。
Nikkei Asia
編集長
田中 暁人氏
「特定の国や地域に偏っていないことが、Nikkei Asiaの大きな魅力。だからこそ、編集チームのダイバーシティを重視しています。編集長である私も、独断に陥らないよう、メンバーの意見をよく聞いて、どのようなニュースを取り上げるのかを判断しています」(田中氏)
Nikkei Asia
編集長
田中 暁人氏
気候変動などの地球規模の問題に加えて、国際紛争や貿易摩擦など、世界を分断するような暗いニュースも増えている。先行きの不透明感が高まる中で、世界の政治や経済に占めるアジアの影響力は、ますます大きくなっている。
「急成長を続けるアジアが世界を動かす時代になっています。Nikkei Asiaは、その動向を独自の視点で伝えていきます」(田中氏)。特定の国や地域を相手にするメディアが多い中で、アジア全域をカバーし、その動きと魅力を世界に伝えるNikkei Asiaへの期待は、高まるばかりだ。
■多様な国籍やバックグラウンドを持つ編集者が参加する編集会議




