NRIネットコム社員が様々な視点で、日々の気づきやナレッジを発信するメディアです

注目のタグ

    資格取得のその先に

    本記事は  AWSアワード受賞者祭り  23日目の記事です。
    ✨🏆  22日目  ▶▶ 本記事 ▶▶  24日目  🏆✨

    こんにちは、越川です。ありがたいことに2025年度も無事に Japan All AWS Certifications Engineers を受賞することができました。

    学習の成果が形になったことは素直に嬉しく思う一方で、資格取得というのはゴールではなく、スタートに過ぎないなと日々の業務を通じて感じています。

    今回は「資格取得をしたその先に、どのようにして実務に活かすべきか?」という観点で、私なりの考えをまとめてみたいと思います。

    資格取得は通過点、信頼はその先に

    資格取得のモチベーションは人それぞれです。知的好奇心、スキルアップ、キャリア形成など、背景は多様でしょう。

    ただ、実際には、実務で活用するために資格を取得する人が多いのではないでしょうか。

    となると、最終的には資格取得で得た知識をどう現場で活かすか?という視点が重要になってきます。

    資格はあくまで肩書きであり、実際に求められるスキルは多岐に渡ります。年々、AWSの全冠取得者も増えてきており、私自身も提案活動を行う中で、肩書きだけで判断される時代ではないと強く感じています。

    クライアントが求めているのは資格を持っている人ではなく、課題を解決できる人なのではないかな?と感じております。

    実務で活きる3つの力

    では、資格取得の「その先」で求められる力とは何か?私は以下の3つが特に重要だと考えています。

    1.個別最適化する力(ニーズの言語化と設計への落とし込み)

    AWSには200以上のサービスがあり、その組み合わせは無限大です。クライアントの要件に応じて、知識を柔軟に適用する力が求められます。

    特に重要なのは、クライアントがまだ言語化できていないニーズをキャッチし、それを言語化するスキルです。

    そして、それを技術的な選択肢に変換し、設計に落とし込む。このプロセスには、アーキテクチャ設計力も含まれます。コスト、可用性、運用性などを考慮しながら、最適な構成を導き出す力が必要です。

    この力を支えるのが、各サービスに対する深い理解です。深い理解を得るには、一次情報として自分で触ってみることが最も重要です。

    AWSのコンソールを開いて、サービスを立ち上げてみる。設定を変えてみる。エラーにぶつかってみる。そうした実体験が、知識を血肉に変えてくれます。

    情報には、自ら体験して得る一次情報と、他者から得る二次情報があります。一次情報とは、実際に手を動かして試すことで得られる生の知見のことであり、二次情報はブログや公式ドキュメントのように、誰かが整理・発信した情報を指します。

    クラウド時代になり、この一次情報を得るハードルは劇的に下がりました。かつてオンプレミス環境では機材調達やインストールの手間をかける必要がありましたが、今ではブラウザ上で簡単に環境を構築し、すぐに試せます。

    一方で二次情報も、クラウドの普及と共に誰もがブログや動画で手軽に情報を発信できるようになったことで、その量は爆発的に増えました。さらに最近では、生成AIを活用すれば膨大な情報の中から必要なものを効率的に収集することも可能です。

    このような時代だからこそ、一次情報と二次情報の両方を使いこなす力が求められます。そして、何より先ずは自分で触ってみるという一次情報が自身の理解を深めることになり、個別最適化能力の礎になると考えています。

    2.翻訳する力(技術の咀嚼力)

    技術的な内容を、相手の理解度や立場に応じてわかりやすく伝える力です。専門用語をかみ砕き、業務やビジネスの文脈に落とし込む。技術者と非技術者の橋渡し役として、信頼を築くための重要なスキルです。 この力があることで、技術が使えるものとして認識され、意思決定の材料になります。

    逆に、翻訳ができないと、技術は「難しいもの」「よく分からないもの」として敬遠されてしまいます。その上で重要なのは基礎理解です。初心者の方にわかりやすく説明するには、基礎的な理解が不可欠です。そういった意味でも、資格取得はその基礎理解を習得する上で非常に有効な手段だと感じています。

    3.巻き込み力(「これならできそう」と思ってもらう力)

    クライアントやチームに「これならできそう」「これならやってみたい」と思ってもらう力です。技術的な提案を、実現可能かつ魅力的な形で提示し、共感を得る。単なる説明ではなく、自分ごと化することで、プロジェクトを前に進める推進力となります。

    この力は、技術力だけではなく、コミュニケーション力や提案力、そして相手の立場への理解が必要です。巻き込み力があることで、技術が「現場で動くもの」になります。

    巻き込む上で重要なのは、具体的なプロセスを提示し、それをストーリーとして構成することです。最近では、モノよりコトと言われることが多いですが、実際にはモノを選ぶときも「これを使うことで自分の生活がどう変わるか?」というコト視点で判断しているのではないでしょうか。

    AWSを活用した提案も、一見すると、サービスというモノを買ってもらうように見えるかもしれません。しかし本質は、そのモノを通じて、クライアントがどんなコトを得られるのか?という視点で提案することが大切です。

    業務の効率化、運用負荷の軽減、新しい価値の創出など、クライアントが実現したい未来に対して、AWSの技術をどう活かすかを描く必要があります。

    つまり、モノでもコトでも、ストーリーベースで提示することで、クライアントはよりリアルに、そしてより近い距離感で、自分たちの業務がどう変化するのかをイメージできるようになります。その臨場感こそが、行動を促す原動力になるのだと思います。

    おわりに

    AWS全冠は通過点であり、これからがスタートです。資格を活かして、実務で価値を出すことが重要だと思っています。資格を取った人ではなく、課題を解決できる人になるために、これからも学び、実践し続けたいと思います。

    資格取得は素晴らしい成果です。しかし資格を取った「その先」に何を目指すのか。どう行動するのか。それを考え、実践していくことが、技術者としての成長につながると私は思っています。

    執筆者越川

    インフラエンジニアで主にAWSを取り扱っています。


    執筆記事一覧:https://tech.nri-net.com/archive/author/t-koshikawa