ヴァレット / VARLET ゲーム公式サイト - フリュー
『ヴァレット / VARLET』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:フリュー
機種:PS5/Switch/PC
ジャンル:学園RPG
発売日:2025/8/28
価格(税込):8778円
定期的に有名クリエイターを招集した完全新作を送り出すフリューの最新作だ。
『モナーク/Monark』の流れを汲む新しい学園RPGという立ち位置で、BGMを増子津可燦、シナリオを三雲岳斗&伊藤龍太郎、シナリオ監修に鈴木一也と、今回も旧メガテンシリーズ系のクリエイターで固めてある。開発はアクリアが担当しているぞ。
しかし作りかけとしか思えない箇所と、単純にクオリティが低い箇所の合わせ技で、目を覆いたくなる惨状になっている。いくらフリューでも、このレベルのゲームを出すようになったら終わりだぞ!と言いたくなるヒドさだった!
- 自らを「革命」し、欲望を暴走させた人間と戦う近未来学園RPG
- 虚無過ぎるSSS活動と雑な世界観描写で心が砂漠になる。
- 掘り下げ不足、ツッコミ所だらけのシナリオ!
- 装備の概念が無い簡素な戦闘!システムは無難だがバランスが大味すぎて作業化。
- プレイヤーの足止め以外何も考えていないダンジョンで心が砂漠になる。
- デザイン周りは良し!楽曲も良いけど使い方が塩過ぎる……。
- 「フリューのRPGならこのくらいだろう」の底をぶち抜く低クオリティ完全新作!
自らを「革命」し、欲望を暴走させた人間と戦う近未来学園RPG

舞台となるのは「ジョハリ」という最新のネットワークサービスがインフラとなっている複合現実特区。そこの輝星学園に転校してきた主人公が従姉に任命され、生徒の悩み事を解決する生活相談室、通称SSSの室長をすることになる。

立ちはだかるのは人間の承認欲求の暴走によって生まれる異空間グリッチ。そしてグリッチに潜み、人間との入れ替わりを目論む怪物デザイア。夢を通して主人公に干渉してくる謎の人物や、学園を取り巻く複数の勢力も物語に絡んでくる。
自らを「革命」し、戦う力を得た主人公と仲間達はデザイアに立ち向かい、学園の平和を守る!というストーリーだ。
デザイアが人間との入れ替わりを目論むって終盤でやっと出てきた話なんだが、普通に公式サイトの最初に書いてあるんだな……。

みんな革命の力でカッコ良く変身して戦うぞ!世界を革命する力を!
ジャンヌ・ダルクを落とし込んだ主人公意匠がかっけぇ~!これを見た時のワクワクがピークだったかもしれねぇ~!

その次がディクタトール形態の登場で3番目が魔法少女イルミン登場シーンかな。サイバー和服スーツがイカしてる。どこが魔法少女だよと思ったら「特撮も好きなので……」というセリフでなるほどウルトラマントリガーじゃねーの。

ゲームは自由に校内を探索して悩み事など解決し、ミニダンジョンで経験値稼ぎも出来るSSS活動、メインストーリーを進めるダンジョン、選んだ仲間と交流を深めて好感度を上げる放課後パートを繰り返す構成だ。
構成してる要素のすべてに問題があるので順番に突っ込んでいきますね。
虚無過ぎるSSS活動と雑な世界観描写で心が砂漠になる。

まず自由行動的なSSS活動だが、やることは狭い学園をウロウロして落とし物を拾ったりAR広告を貼ったりする雑用だけ。悩み事はただの落とし物探し。落とし物はボタンを押して周りをスキャンして探す必要があり、スキャン範囲が狭いので「ソナー!」「ソナー!」というスキャン用のナビ音声を死ぬほど聞くことになる。気が狂いそう!
ストーリー進行に合わせてモブのセリフが変化したりはするが、基本的に立ち話を聞くだけ。しかも立ち話を聞くたびに「話している会話の音量を増幅します!」というナビ音声が入るので、盗み聞き感が強調されてめちゃくちゃ嫌な感じになってる。
RPGで立ち話を聞く時に「話している会話の音量を増幅します!」ってナビボイス付けるだけでこんなに嫌な感じになるんだな……。 pic.twitter.com/PvYaRS9iM8
— ゲームブロガー双葉ラー油 (@daikai6) September 16, 2025
ゲームのボイス自体をオフにしないとこのナビ音声は消せないぞ!
話しかけたモブのプロフィールが記録されたりするものの、細かいやり取りが一切出来ないモブのプロフィールが記録されたからなんだってんだよ……。何も考えずに『カリギュラ』を劣化コピーしたようなシステム。

SSS活動は悩み事を解決して「いいね」を集めてランクを集める要素があったり、活動に応じてお金が貰えたりするんだが、ランクによってイベントが発生するわけでもないし、ショップで変えるのが安い回復アイテムだけなので金を無理に溜める必要もない。
スキップ機能があるので、こんな騒音を撒き散らしてゴミ拾いする虚無活動は無視すれば良いんじゃないか?
と、途中から全スキップしたが何も問題は無かった。何も問題が無いことに問題がある。

場面転換の際に時間経過を表現する共通演出があるが、ゲーム的に何の意味も無いし、このせいでシナリオがぶつ切りになる箇所もあって意味不明
本来はスケジュール組んで育成するゲームの予定だったのか……?
こんな時間経過の演出はあるのに季節イベントや行事や授業の描写はまったくないため、学生の実感が薄いし今が何月なのかも分からない。日常会話から「冬服の話が出たから秋くらいの話かな?」って推測するしかない。学園RPGとして斬新過ぎるだろ。

舞台となっている「複合現実特区」はSNSと仮想空間を融合させたネットワークサービス「ジョハリ」がインフラになってるらしいが、どういう場所なのか遊んでいてさっぱり分からない。

具体的な描写が校内にゴミみたいなAR広告がプカプカ浮いてるくらいだし、そのゴミAR広告を貼る作業をプレイヤーがやらされる。
こんなに近未来描写がヘタな近未来学園RPGがあっていいのかよ!?
近未来を舞台にした学園RPGでここまでLINEの使い方が下手なの逆にすげぇぞ『ヴァレット』 pic.twitter.com/qQ33woSC7r
— ゲームブロガー双葉ラー油 (@daikai6) September 23, 2025
定期的に差し込まれる仲間とのLINEも虚無過ぎて真顔になる。これ本当に仲間からのLINE?AIから来てない?

『REYNATIS/レナティス』ではメッセージアプリ使った仲間の掘り下げ面白かったじゃん!
掘り下げ不足、ツッコミ所だらけのシナリオ!

シナリオも酷いもので、自分自身に革命を起こして歪んだ承認欲求に立ち向かう話なのに「この空間なら自分も戦える!」で雑に覚醒する展開ばかりだ。自分の弱さと向き合って革命を起こすキャラもいるにはいるんだが、根本的にシナリオの出来が悪くてあんまり魅力的に映らない。「プレイヤーが知らない主人公のすごい過去」を軸にいきなり尊敬してきたり、実力を認めたりする展開が多いから置いてけぼりになる。

エリートで周りからの重圧をストリートアートで発散してる漉名先輩とかは、ちゃんとテーマに沿った描き方が出来ていて好きなんだけどなあ。
各エピソードも
「今回のチャプターで騒動を起こしてる黒幕は誰なのか?」
「誰の欲望が騒動を起こしているのか?」
というミステリー仕立てのシナリオなのに、急に出てきた掘り下げの無いヤツが逆恨みで犯行に及んでました!って展開ばかり!
しかも公式の2ndPVで各チャプターの犯人をほとんど全部ネタバレしちゃってる!
ネタバレあるって聞いてたのでクリア後に見たんだけど、マジでシナリオの8割くらいネタバレしてて笑うしかない。

承認欲求にSNSや配信やアイドルを絡めた展開にしてるが、めちゃくちゃ描写が薄っぺらいしツッコミ所も多い。チャプター4は特に凄かった。
生徒会選挙に関する話で、マスクをした様子のおかしい連中が選挙妨害をしてくるし、マスクをした人間がどんどん増えていく。顔から上をスッポリ覆うマスクしてるのに、「お前は○○!」ってすぐ分かったり、逆に同じほぼビジュアルの元凶は正体が分からなかったり……。
シナリオ書いた人の想定と実装にズレがありそうな描写。
実はマスクは洗脳マスクだったが、引っぺがすだけで簡単に正気に戻せる。
じゃあ片っ端からマスク剥がしていけばいいんじゃない?と思うんだけどそういう流れにはならない。
怪しいマスクした集団が校内の生徒会選挙で騒動起こしてるのに、生徒会長が何も知らないのおかしくない?すっとぼけてるのか?と思ったら真相と関係ない。
なんなんだよこのエピソード!

他にも「この組織ってどのくらい権限があるの?」「なんで敵は学園内にある主人公たちの拠点を押さえないの?」みたいなところが常にフワフワしているし、変装するシーンが眼鏡をかけるだけとか、偽名で活動してるキャラが本名そのまんまとか、ギャグでやってるのかと思うようなシーンが多い。
問題起こしたキャラを場当たり的に倒していくストーリーで、遊んでいて主人公たちの目標が見えてこないのも良くないと思った。
終盤になるとこれまで登場したキャラが再登場して物語が動き、真相の開示からのどんでん返しに繋がっていくんだが、このどんでん返しすらも手垢付きまくりの展開で捻りも無い。「物語が動いたので多少は面白く感じた」というレベルだ。
装備の概念が無い簡素な戦闘!システムは無難だがバランスが大味すぎて作業化。

戦闘は最大3人で行うコマンド式で、左に表示された順番に行動していく。大技は行動まで時間が掛かったりする。
行動の弱点を突くことで有利になるシステムで、ガードしてる相手にはこの技、チャージしてる相手にはこの技、などで大ダメージ&行動のキャンセルが可能だ。スタンゲージを削ってゼロにすればスタン状態になってチャンス到来。
行動タイミングを上手く見極めれば一気に有利になるし、行動で溜まるAPゲージを消費して、順番の途中で割り込むシステムもある。このおかげで行動まで時間の掛からない通常攻撃でAPを稼ぎ、ここぞという場面で大技を割り込ませて相手に大ダメージ!というやり方もできるぞ。

ピヨらせた相手にバインド属性のスキルを打ち込むと「モーメンタリータイム」に突入し、一定ターン殴り放題で最後は必殺技をドーン!ボスはこれを前提としたバランスになっている。モーメンタリータイムは4つの行動を組み合わせて大ダメージを与えられるが、「コンボ」コマンド連打以外で高火力を出すやり方がよく分からなかった。
そういうシステムで行動を考える面白さは多少あるものの、武器や防具やアクセサリーの概念が無いという驚くべき簡素さで味気ないし、ザコもボスも個性が薄い。色々出来るようで、実は戦略の幅が狭くて同じような戦い方の繰り返しになりがち。難易度も低く、中盤以降は全体攻撃でザコ散らすだけだった。
戦闘に入っていない仲間に経験値が入らず、新しいスキルは回数制限のある下校イベントで好感度を稼がないと習得できないため、途中加入の仲間やスタメン以外の仲間が非常に使い辛い。結局、同じメンバーで同じような戦い方をするだけで、育成やパーティ編成の面白さが薄い。難易度低くてもこの辺が面白ければまだ良かったんだけど……。
全体的に攻撃演出が地味で、最強攻撃スキルですらパッとしないのもRPGとして寂しい。
プレイヤーの足止め以外何も考えていないダンジョンで心が砂漠になる。

ダンジョンは単調過ぎて虚無。
無駄に広いだけの一本道に大量のザコ敵を配置し、複数のスイッチの切り替え、1マスだけ穴を塞げる橋を活用した迷路、ソナーで隠れてる敵を探して倒す要素、逃げる敵をブロックで足止めするギミックなどを延々やらせる作り。プレイヤーの足止め以外に何も考えていないダンジョンがラストダンジョンまで続く。
装備の概念が無いので、宝箱も余るくらい手に入る回復アイテムと換金用のアイテムしか入っていない。
戦闘が面白くないのにダンジョンも面白くないという救いの無さ!

ボスの深層心理が反映されたダンジョンの風景はそこそこ良いかな。
デザイン周りは良し!楽曲も良いけど使い方が塩過ぎる……。

長所を挙げるとポリゴンモデル。
イラストの雰囲気がしっかり出ていて、立ち絵とポリゴンモデルの口パクが同期してるのも珍しい凝り方だ。

『REYNATIS/レナティス』はポリゴンモデルとイラストの顔が違い過ぎて違和感スゴかったので、これは進歩してる点と言える。
改めて見てもひどいなこのポリゴンモデル!2024年のフルプライスゲームなのに!

主人公たちの戦闘時の姿やボスも含めたデザイン周りはよく出来てるし、好感度上げて個別イベントを見ていくとキャラの掘り下げも多少はある。
ここら辺は評価点と言いたいが、個別イベントを最後まで見たキャラはパートナーとなる。複数キャラをパートナーにすると二股となり、取ってつけたような修羅場イベントが発生。しかし、それを嫌がってパートナーにしない選択肢を選ぶと、そのキャラの最後のイベントは見れなくなる。
1周目で全てのイベントが見られるキャラはどう頑張っても6人中3人。にも関わらず2週目への引き継ぎ要素は一切無し。
イベントコンプを目指すプレイヤーに優しくない仕様である。

公式でもウリにしているところだが、多数のコンポーザーを起用して複数のテーマ曲を作成している。楽曲は良いので長所と言いたいが、掘り下げの薄いボス戦で1回流れるだけなので印象に残らない。
楽曲はボスのテーマ曲になっていて、ボスに対応した主人公サイドのキャラが歌うアナザーバージョンが用意されてるのは面白い試みなんだが……。

アナザーバージョンは下校イベントでカラオケに行った時だけ聞ける使い捨ての扱い。大半のプレイヤーがほとんど聴かないまま終わってしまう。
なんでこんなに勿体ない使い方しちゃうんだよ!『カリギュラ』はこういうテーマ曲をもっと上手く使えてたじゃん!
「フリューのRPGならこのくらいだろう」の底をぶち抜く低クオリティ完全新作!

クリアまで28時間ほど。
あからさまに未完成品みたいなゲームで、戦闘が面白くないのにダンジョンも面白くなくて、シナリオも面白くないフルプライス作品という、この世の終わりみたいなゲーム。
フリューのRPGで遊んだことあるのは『レジェンドオブレガシー』『アライアンス・アライブ』『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』『WORK×WORK』『CRYSTAR -クライスタ-』『REYNATIS/レナティス』くらいでそんなに多くないが、その中ではぶっちぎりでワースト。
登場キャラの描き方、楽曲、演出と、過去のフリュー作品でもっと上手く出来ていた箇所が尽くダメになっているので、フリュー作品を沢山遊んでいる人ほどガッカリすると思う。
大手のフルプライス作品ほど豪華な作りに出来ないけど、尖った作りやコンセプトで勝負しますよ……というやり方をしてきたゲームメーカーが、こういう惰性と妥協の塊みたいなゲームを売り始めたら終わりだと思いました!