はじめに SNSを開けば、今日もまた誰かが何かに本気だ。 新しい技術やフレームワークに興奮するエンジニア。最新のビジネス書を読んで「人生が変わった」と叫ぶビジネスパーソン。世の中の理不尽に憤慨し、世界を変えようと声を上げる活動家。生成AIの新機能やツールのアップデートに「未来が来た」と歓喜する人々。自己啓発系インフルエンサーの「新しい生き方」に感銘を受け、それがストア哲学やブッダの教えの言い換えに過ぎないと気づかない人々。 世の中には、あらゆることに本気になれる人がいるものだ。 私は、一歩引いた場所から、彼らを観察していた。興味深い現象として。分析対象として。 本を読んだ。いろんな本を。技術書も哲学書も歴史書も。視野が広がった。気づけば環境問題も、格差も、戦争も、技術トレンドも、ビジネス理論も、すべてが複雑に絡み合った世界が見えていた。 そして同時に、絶望も見えた。 簡単な解決策などない。

